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ディープ・パープル(イアン・ギラン)インタビュー

Q1:最新アルバムを『インフィニット』というタイトルにした理由を教えてください。

A: そうだな、Infinite とは無限を表す言葉であり「終わりがない」という意味だが、同時に「始まりもない」ことになる。実際、それは正しくない。なぜなら僕らは(レコーディングを)始めたし、終わらせた。その意味で人間には「限りがある」んだ。しかし、以前に起きたこと、今後起きること…ということも考慮に入れなければならない。後世に残るレガシーであったり、影響であったり。そういう意味で、作品を作る上で実に興味深いコンセプトだと思ったんだよ。僕らの前にあった音楽、心の琴線に触れた音楽を受け入れ、何を今後に僕らが残して行くのか。形のない始まりであり終わり、ということさ。



Q2:ジャケットやブックレットはまるで極地探検隊を思わせますが、その意味は?

A: アルバムのジャケットのデザインが実は先にあったんだ。砕氷船が南極の氷原を無限大を意味するレムニスケート(∞)のシンボルを描きながら、進んでいるというものだ。そのイメージが先にあったので、僕らもそのモードで続けるのが正しいと思ったんだ。つまり僕らも南極だか北極だかにいるんだよ、そのイメージを持続させる意味で。



Q3:強力な楽曲揃いですね。創作のアイディアの源は何ですか?

A:創作のアイディアはこれまでと何ら変わらず、自分達の周りに起きていることから得ることだ。楽曲は何もない所から、座ってて自然に生まれる訳ではないからね。音楽はミュージシャンが集まってその人間同士のケミストリーから生まれるが、歌詞には二つのタイプがある。一つは物語として伝える書き方、二つ目は印象主義。僕らには曲にできるストーリーはいくつも、それこそ無限にある。印象主義は絵画の印象派と一緒で、絵を描くように、気分や恋愛関係などのことを歌にする。抽象的な場合が多いね。あとは僕らの場合、アルバム2~3枚ごとに、コメディ・ソングやノベルティ・ソングというのも顔を出すことがある。インスピレーションは窓の外にハエが飛んでるみたいに、やってくるものさ。誰かとの電話の会話からだったり、新聞のニュースだったり、ゴシップだったりね。



Q4:ドアーズのカヴァー”Roadhouse Blues”を取り上げた理由は?彼らと共演したことはありますか?

A:スタジオで、曲作りやレコーディングにたまに余裕があったりすると、僕らはやることがなくてソワソワしてしまい、結局はジャム演奏が始まるんだ。”Roadhouse Blues”もたまたまスタジオでジャム演奏が始まり、テープが回っていたという曲だ。アルバムに入ることになるとは思わなかったよ。ドアーズと共演したか?という質問の答えはノーだ。初期にも一度もない。ドアーズは素晴らしいバンドだった。”Roadhouse Blues”も”Light My Fire(ハートに火をつけて)”も60年代、70年代の音楽シーンに大きく貢献した曲だったね。



Q5:来日直前に、フランス、ヘルフェストでのライヴ音源を中心とした作品をリリースしますが、あなた方はライヴ作品のリリースが多いですね。これはライヴ・パフォーマンスの自信の表れでしょうか?

A:当然自信はあるよ。自信がなければ今ここにいないだろう。高い水準を維持する努力もしているが、毎晩インプロヴィゼーションの部分も多いので、ライヴごとに違う部分も多い。実際、そうであることが求められているんだ。僕らのファンは変わらない部分だけでなく、ライヴごとに変わる些細な違いを全部聞きたいと思ってるファンが多い。だから僕らもやるのさ。つまりは需要と供給の関係ってことだね。



Q6:デビュー盤のリリースが1968年。実に50年の歳月が経っていますが、振り返ってみていかがですか?

A:50年というのは人間にとっては長いが、宇宙からしたら50年なんて(口でポンっとやって)こんな程度で、あっという間だ。バンドは家族みたいだと考えるべきで、気のあう仲間が長く付き合ってきて、大概はいい関係で来られた。でもどんな家族もそうであるように、山あり谷あり、仲違いし、離婚し、再婚し、新しい家族が増えたり、色々あった。でも健康で、良い価値観を持てるなら、進化し続けられる。幸い、僕らは進化し続けていると思うし、とても楽しい時間を過ごしてこられたよ。終わりは道を曲がったあたりにあるのかもしれないが、曲がらないとそこは見えないものだ、そうだろ?



Q7:現在のラインナップになってから16年が経ちました。70年代の伝説的な活動歴より遥かに長いわけですが、それについてはどうですか?

A: 分析すると、感情的なレベルでの話になってしまうが…。スティーヴ(・モーズ)が20年ちょっと前に、ドン(・エイリー)が16年前に加わって以来、バンドは非常に良い状態にある。おかげでバンドは安定し、互いがリスペクトし合い、各個人が多くをバンドにもたらし、理解している。バンドのスタート当初から、僕らには一定の価値観や主義があった。だからこそ、それを拡張していくことが出来たんだ。つまり土台は最初に作られていたということだ。それはイメージとかまやかしではなく、あくまでも音楽に基づいた、サウンドを原則としたものだった。僕自身、楽しんでやってきたよ。特に、それ以前のことがあったから、この16年間には満足している。大きな挫折を経験し、そこから復活できたわけだから。とても嬉しいよ。



Q8: あなたたちのステージは年齢からは想像もつかないほど、毎回パワフルでタイトで高水準です。ツアーで街から街への移動だけでも大変かと思いますが、いい状態を保つ秘訣は?

A:僕らのステージが高水準なのは年齢のおかげだよ。年齢が妨げになるどころか、その逆だ。若いエネルギーにとって代わり、経験が物を言うのは素晴らしいことだね。要はいかに適応するか、ということでツアー自体、それほど大変じゃない。ツアーを経験したことない者は口を揃えて「大変だろう?!ツアー最後の頃なんてボロボロなんじゃないか?毎晩ホテルを変わって、移動して、夜はライヴをやらなきゃならないなんて!」と言うけれど、そんなことは全然ない。逆にツアー中の方がリラックスして、健康的だし、仕事をしている時の方がしていない時より、心も満たされている。というのも、人間が幸せであるために必要なものが二つあって、一つは目的意識、もう一つは所属意識だ。バンドでツアーを行うのはその両方が満たされることだからね、みんなが想像するような辛いことは何一つなく、最高なのさ。



Q9:今回のツアーは「The Long Goodbye」と意味深で、アルバムとは真逆のタイトルですが、本当にこれでお別れなのでしょうか?

A:数年前、バンド全員が健康を害した時期があって、その時「このまま永遠に続けていくことは出来ない」という現実に直面せねばならなかった。未来のプランを立てるべきだと思い始めたんだが、そういうのは得意分野じゃなくてね。でも心の準備はした方がいいと周りからも言われた。世間に向けてというよりはあくまでも自分達本位な意識の問題なんだ。これまでずっとツアー生活を送っていたのを突然ツアーを辞め、終わりに備えるというのは、心理的にとても辛い。そこで「ロング(長い)グッドバイ」と呼んだのさ。別れまでのゆとりを持たせたというか。それが数年前のことだが、それ以来僕らの体調はまた優れているので、もうしばらくは続けることになるだろう。これが最後の日本ツアーになるのか?と聞かれたら「わからない」と答えるしかない。未来を予測できた試しがないし、本当にわからないよ。そうでないことを願っている、というのが本心だがね。



Q10:最近の若手ミュージシャンで注目している人はいますか? 若手に限らずお気に入りミュージシャンは?

A:ミュージシャンに限らず、一般的に若者というのは、年寄りから自分のやってることをコメントされるのを好まないものだよ。20歳にとっては自分は不死身で、自分が作ったものは全て自分の力、誰の影響も受けておらず、全て自分が持って生まれた才能の賜物だと考えている。僕自身、若い頃はそうだった。そういった心理的な蛮行を必要だと感じていた。自分の周りのものを破壊して、自分の周りに誰もいられないようにすることで自分が良く見えると考えてたのさ。いつだって若い世代とはそういうものだ。音楽に限らず、アート、文学、絵画、ダンス、演劇といったコンテンポラリーアートは外部者がジャッジできるものではない。その当事者、その世代でなければならない。その時代を生き延びたなら、より広いレベルで評論することも可能だが、「まさに起こっている今」は若者のエネルギーだけで成り立っていて、僕のような年寄りがコメントする筋合いじゃないよ。



Q11: 10月の日本公演はどんな内容になりそうですか?見所を教えてください。

A:どんなライヴになるかって?よく尋ねられるよ。50年間ずっと尋ねられ続けてきた。普通なら「前回と一緒」なんだろうけど、本当の答えは「英国の天気と一緒」つまり色々変わるよ、ということだ。朝起きると天気は色々だ。太陽、曇り、雨、雷、強風、穏やかな日…。それに似てる。ディープ・パープルのライヴには4つの要素がある。1つは誰もが知っているいわゆるクラシック・ナンバー。2つめはラジオではかからずプロモーションされることはなかったが、ファンは長年の経験で知っていて好きでいてくれる”知る人ぞ知る”的なナンバー。僕ら自身もやって楽しいやつだよ。3つめは新曲。やりすぎないようにはしてるが、新曲を含むことは大事だ。だってどんな曲もかつては新曲だったわけで、新曲をやらなきゃ古い曲もない。そのことを理解し、排除しちゃならない。でも大半の人は聴き馴染んだ曲を聴きたいと願うので、新曲をやるのはチャレンジだ。多くなりすぎないように新曲はやるのが大事なことだ。4つの要素はインプロヴィゼーション。これが(今まで挙げた)全てを一つにする要素でもあるし、僕らにとっては気を張り詰めなければならず、毎晩がチャレンジだ。何が起きるかわからないからね。メンバーそれぞれ、バンドとして、どこからどういう演奏をしてくるか予測できないので、常に構えて、それに応じなければならない。それこそラップからキャバレー・ミュージックから繰り返される音楽まで。即興演奏の重要性はファンが理解してくれているし、僕らがここまで続けてこれた理由の一つじゃないかな。僕らが新鮮な気持ちでいられるのはそのおかげだ。日本に戻れる喜びに加え、オーディエンス(の素晴らしさ)を考えれば、エネルギーが爆発するエキサイティングなライヴになることは間違いないよ。とても楽しみだ。



Q12: 日本のファンへのメッセージを。

A: 日本のファンのみんな、本当にありがとう。バンドのごく初期の頃から、君たちは素晴らしいファンだった。初来日で受けたショック、興奮を今も覚えているよ。日本の文化、人の温かさは僕らにとって大きな意味があった。その後、何度も来日する中でずっとついてきてくれているファン、さらには新しいファンも増え、大いにやりがいを感じるよ。この場を借りて、初来日からのプロモーターであるミスター・ウドーと素晴らしいチームにもお礼が言いたい。毎回、最高のツアーをさせてもらえている。プロフェッショナルな興行とはどういうものか、その基準を打ち立てたのが彼だよ。世界中のプロモーターがその基準に追いつくのに、数年かかった。いや、まだ全員が追いついているとは言えないね。日本に行けるのは毎回喜びだ。楽しみにしているよ。ありがとう。



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